ボラティリティモデリングに対する批判

 専門家による洗練されたモデルの構成にも関わらず、ほとんどのボラティリティ予測モデルの予測力は、プレーンバニラ(通常のオプション)を用いた単純なモデルと似たような結果をもたらしている。ボラティリティ予測モデルに関する論文の多さは圧倒的である。数千人もの学者たちは、ボラティリティを予測できるとされているモデルを開発することに彼ら自身のキャリアのすべてを割いている。ある学者は、このトピックに関して40以上もの論文を発表している。しかしながら依然として、通常の標準偏差ヒストリカル・ボラティリティ)より優れた改良を成し遂げていないようだ。

 Torben Andersen教授は、いくつもの論文において懐疑論者たちを激しく批判している。"Answering the Critics: Yes, ARCH models do provide good volatility forecasts" (Profs. Andersen and Bollerslev)においては、この分野をリードしている研究者たち、例えば、Cumby, Figlewski, Hasbrouck, Jorionらをも、彼らがモデルを正確に実装していないとして、強く批判している。また、彼らの論文 "Answering the Skeptics: Yes, Standard Volatility Models Do Provide Accurate Forecasts"( Profs. Andersen and Bollerslev)の中では、ボラティリティ予測モデルを"オッカムの剃刀"を用いて批判する人々に対して強く反論している。

 興味深いことに、 Journal of Finance, Journal of Derivatives, Journal of Portfolio Managementなどのようなトップジャーナルにおいて、彼らを批判する者たちが論文を掲載している間、それらに対する反論や懐疑論者への批判をする者は同様の一流ジャーナルに、対抗した論文を掲載できなくなっている。多くの場合で、それらを発表せずに、ワーキングペーパーとして残されている。

 ボラティリティ予測モデル信者と懐疑論者たちとの論争に加えて、彼のモデルが他のものよりも優れているという主張のために、研究者同士での議論も存在する。2008年8月に、Torben Andersen教授とOleg Bondarenko教授らが、またしても同業者たちを驚かせた。というのも、彼らはボラティリティ予測モデルが優れているというだけでなく、ボラティリティに関する今後の研究は無意味だということを数学的に証明してみせたのだった。彼らのモデルに勝るような予測モデルはないだろうという訳だ。彼らが開発したCIVモデルに関するインタビューの中で、二人は敢えて断言している。"最も優れているであろう、マーケットをベースとしたボラティリティ予測に対する、インプライドボラティリティメジャーはCIVモデルの形をしているだろう。"

 この論争とは違って、実務家やポートフォリオ・マネージャーらは、ボラティリティ予測モデルを全くと言っていいほど相手にしていない。例えば、有名なところで、ナシーム・ニコラス・タレブは Journal of Portfolio Managementの中で、論文の表題に、"We Don't Quite Know What We are Talking About When We Talk About Volatility."としている。タレブは、彼自身の" Black swan theory"を通して世界中からの評価を得た。その中では、不確実性を予測しようとすることの愚かさについて述べられている。

出典 Wikipedia Volatility
http://en.wikipedia.org/wiki/Volatility_(finance)